好調の仮性包茎
法的観点からみて大差がないだけであって、コストの面からみれば大きな違いがあります。
しかも、売り手と買い手とでは、手法によりコストが違います。
不動産の所有権移転をともなう手法のうち、売り手にとってもっともコストが安い順にいえば、不動産譲渡、会社分割、営業譲渡になります。
買い手からみてコストの安い順序は、会社分割、営業譲渡、不動産譲渡でしょう。
このように、コスト序列ができる理由は、不動産譲渡では登録免許税ほか譲渡諸経費は買い手負担とする日本の習慣があること、会社分割では前述したように登録免許税が減額になり、不動産取得税がゼロになるけれど、営業譲渡ではそのような特典がまったくなく、登録免許税も不動産取得税も不動産譲渡の場合とまったく同じだということと、ほかに営業譲渡は資産負債の移転の手続きが会社分割より煩雑でコストを要するという点にあります。
ところで、不動産の所有権移転を行う場合でも、売り手は不動産譲渡にすぎないが、買い手は信託受益権の買い取りになるという手法があります。
簡単に説明しましょう。
売り手は買い手の要求に応じて、不動産を信託銀行に信託します。
信託銀行は売り手に受益権証券を発行します。
売り手はこの発行と同時に、かつ瞬時に、収益受益権と元本受益権を買い手に売るという方法です。
つまり、不動産所有権は信託銀行に移転します(税務上は所有権は委託者に残っている扱いです)。
売買代金は受益権の売買のさいに支払われます。
また、このとき同時に、物件に付着していた抵当権も抹消されます。
外資系のファンドが不動産を買い取る手法は、まずこの方法です。
私はつい最近、この信託の方法を使って、売り手側代理人として都心部のビル7棟を一括して外資に売却する契約をしました。
ところで、外資はなぜ信託の方法をとるのでしょう。
理由は簡単で、登録免許税が減額になり、不動産取得税がゼロになるのが魅力だからです。
この事例では、登録免許税だけで7億円ほどになります。
この点では、信託と会社分割とはまったく同じ税率です。
私が代理した売り手にとっては、不動産譲渡でも信託でもコストはまったく同じですから、どちらかでなければならない理由はまったくありません。
しかしながら、買い手にとっては、会社分割と信託とではコストは同じとはいえないのです。
消費税分だけ、信託のほうがコストが高くなります。
外資が信託の手法を使い、なぜ会社分割の手法を使わないのか、不思議でなりません。
というのは、建物だけについてのことですが、消費税法上、信託方式では受益者が建物の所有者とみなされますから、買主である外資は受益者として消費税課税を避けられません会社分割の場合は、まず分割会社の所有不動産が新設承継会社に移転し、次いでその株式(株式会社の場合)あるいは出資(有限会社の場合)が買主に対して譲渡されることになります。
しかし、分割会社から新設会社に(移転する営業の一部を構成する)不動産所有権が移転するのは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡ではないので、そもそも消費税の課税対象ではないため課税されません(同法2条1項8号)。
新設会社から分割会社に対する株式の割り当ては、移転する営業に対する対価とはいえないからです。
次いで、株式または出資の譲渡は、明文で非課税となっているからです(同法6条、別表第1,2号、消費税法施行令第9条1項2号、同4号、証券取引法第2条1項6号、消費税基本通達6-2-1)。
よほど買主である外資に教えてやろうかなと思いましたが、買主には弁護士さんたちが何人もついていましたから、私も黙っていました。
消費税は還付されるから平気だということかもしれません。
なお、登録免許税については、平成15年度から、1000分の50が1000分の20に軽減され、そのうえ3年間は1000分の10にする特例を設けると報道されています。
そうなると、ここでの議論も少し変わってくるかもしれないので注意してください。
労働契約を承継する場合この議論は、実は、甲会社に在籍している従業員を無視した議論です。
他社の一事業を吸収して新規事業を起こす場合に、従業員を引き継ぐのか、引き継がないのかで、法律問題はかなり変わってきます。
甲会社の従業員を引き継ぎたくない事情があるのなら、登録免許税や不動産取得税の減免が受けられなくても、不動産譲渡の方法をとることになるでしょう。
逆に、甲会社の従業員を全員引き継ぎたいのであれば、考えるまでもなく会社分割の方法によるべきでしょう。
会社分割の場合には、労働承継法が自動的に適用になり、乙会社に承継される事業に従事している従業員との労働契約は原則的に(つまり、本人がいやだといわないかぎり)会社分割とともに乙会社に承継されるからです。
また、甲会社の従業員のうち引き継ぎたい者と引き継ぎたくない者とが事前にはっきりわかっている場合には、営業譲渡(譲受)の方法がもっとも適しています。
なぜなら、営業譲渡なら従業員を選択的に選べるからです。
営業譲渡は営業の全部の譲渡もありますが、営業の一部の譲渡も認められており、従業員との労働契約は商法上の営業の一部分を構成していますから、営業の一部の譲受が認められている以上、従業員との労働契約の一部だけの譲受ができるのは当然だからです。
従業員を引き継ぐにしても、実務上、退職金をどうするかは重要な問題です。
会社分割の場合は労働契約が乙会社に承継されますから、甲会社から乙会社に移るさいに甲会社から退職するということがなく、したがって退職金の支払いはまったく問題になりません。
営業譲渡の場合は、労働契約が乙会社に譲渡されるにしても(従業員が労働契約の譲渡を承諾したとして)、労働契約の承継ではなく、労働法上はいったん退職し、乙会社に同じ労働条件で再雇用されるのですから退職金が発生します。
しかし、実務上は、従業員との紛争の発生を避ける意味から、譲渡される営業に従事していた従業員は全員を乙会社の新規事業に移籍するのがふつうです。
このような場合には、退職金のキャッシュアウトを避けるため、乙会社が甲会社に支払う営業譲渡代金のうちから、甲会社が従業員に支払うべき退職金を甲会社の賃金規程にもとづいて計算して合計額を控除し、乙会社は当該従業員が乙会社を退職するさいに当該従業員が甲会社に在籍していた時代の退職金も併せて支払うという方法をとっているでしょう。
もちろん、このような扱いをするためには、当の従業員の同意を必要とします。
したがって、私は、営業譲渡の方法をとり、かつ甲会社の従業員を乙会社に移籍しようという場合は、営業譲渡契約締結後、その履行開始前に、従業員に対して、移籍に応諾するか否かとともに、退職金の扱いについても本人から同意書をとるようにしています。
このように検討してきますと、会社分割は労働契約の承継という観点からも、実に合理的に事業を承継し、円滑に新しい事業を起こしていくことができる技術であるといえます。
乙会社が甲会社の事業を吸収し、新規に事業を起こしていこうとする事例で、甲会社の商号を使いたいという場合があります。
甲会社の名前が有名で、それ自体に経済的価値があり、顧客が商号に付いているという場合です。
他方、甲会社は事業内容を変更ないし廃止するか、あるいは甲会社に残るA事業には甲会社という商号がふさわしくはないから、商号を変更してもかまわないなどという場合が典型でしょう。
そのような典型的な事例でなくても、私の経験では商号を続用したいという事例は結構多いものです。
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